「線を引くだけ」から始まった
タワーディフェンスが好きだ。敵の侵攻ルートを読み、最適な配置を考え、大群を捌いたときの達成感がたまらない。でも、初めて遊ぶ人にとってタワーディフェンスは「覚えることが多いジャンル」でもある。タワーの種類、配置コスト、アップグレードツリー、シナジー。面白さにたどり着く前に離脱してしまう人も少なくない。
Firewall Drawは、その問題に正面から向き合ったゲームだ。コンセプトは「マウスで線を引くだけで遊べるタワーディフェンス」。ユーザーが覚える操作はたったひとつ、画面上に線を引くこと。それだけで防衛ラインを構築し、押し寄せるウイルスの群れを迎え撃つ。チュートリアルがなくても、触った瞬間に「なるほど、こういうゲームか」とわかる。そのシンプルさを最重要目標として設計した。
ただし、シンプルなだけでは飽きる。操作は「線を引く」の一点に絞りつつ、その引き方ひとつで戦略がまるで変わる深みをどう持たせるか。そこがこのゲームの設計の核心だった。
コアメカニクス: 光の壁で敵を迎え撃つ
プレイヤーがマウスをドラッグすると、軌跡に沿って光の壁(ファイアウォール)が出現する。この壁に触れたウイルス型の敵はダメージを受け、やがて消滅する。操作はこれだけだ。
技術的には、Phaser 3のCanvas APIを使ってマウスの軌跡をリアルタイムに描画している。ポインタの座標を一定間隔でサンプリングし、線分として繋いで当たり判定を持たせる仕組みだ。タッチデバイスにも対応しているので、スマホでは指でスワイプして壁を描ける。PCでもスマホでも、同じ直感的な操作感を実現している。
覚える操作はひとつだけ
マウスをドラッグして壁を引く。壁に触れた敵が倒れる。これがFirewall Drawのすべてだ。ここから先は、どんな壁を、どこに、どのタイミングで引くかという「戦略の深さ」の話になる。
引き方で変わる面白さ
操作が「線を引く」だけだからこそ、その一本一本に意味を持たせたかった。Firewall Drawでは、壁の長さ・配置・タイミング・本数のすべてが戦略に影響する。
短い壁 vs 長い壁
壁の長さにはスコア倍率が連動している。壁が短いほど倍率が上がり、最短で最大2.0倍。逆に長い壁は倍率が1.0倍に落ちていく。長い壁は広範囲をカバーできて安全だが、スコア倍率は低い。短い壁は高倍率だが、当然カバー範囲が狭く敵を通してしまうリスクがある。安全をとるか、ハイスコアを狙うか。このリスクとリターンのグラデーションが、同じ「線を引く」操作に緊張感を与えている。
壁の配置
敵は画面の上方からゴールに向かって進んでくる。進路を予測し、最も多くの敵が通過するルート上に壁を置く空間的な戦略が求められる。横一文字に引くか、斜めに引いて接触時間を稼ぐか。敵の動きを観察して壁の角度を工夫するだけで、同じ壁でも効果がまるで違ってくる。
タイミング
壁は永続しない。一定時間が経つと自然に消滅する。この「消える」という制約が戦略に奥行きを生んでいる。壁が消える直前に複数の敵が同時に接触していればマルチキルボーナスが発生する。つまり、敵の群れが密集するタイミングを見極めて壁を引くと、一気に大量のスコアを稼げるわけだ。
同時壁数の制限
画面上に存在できる壁の数はデフォルトで最大3本。4本目を引こうとすると、最も古い壁が消える。この制限があるからこそ、「今ある壁を消してでも新しい壁を引くべきか」という判断が常に求められる。有限のリソースをどう配分するかという、タワーディフェンスの本質的な面白さがここに凝縮されている。
5種類の壁属性
ゲームが進むと、壁に属性を付与できるようになる。全5種類の属性それぞれに個性があり、状況に応じた使い分けが戦略の幅を大きく広げる。
- 基本(白) — 純粋なダメージ。クセがなく扱いやすい、すべての基本
- 炎(赤) — 接触した敵に継続ダメージ(DoT)。壁を離れた後もじわじわ削れる
- 氷(青) — 敵の移動速度を80%減速。直接火力は低いが、足止めに絶大な効果
- 雷(黄) — 瞬間火力が最大。硬い敵を一撃で仕留めたいときの切り札
- 毒(緑) — 炎より長時間の継続ダメージ。大群をまとめて毒状態にして放置する戦法が強い
各属性には専用のパーティクルエフェクトを実装している。炎の壁は炎がゆらゆらと揺らぎ、氷の壁は結晶がきらめき、雷の壁は稲妻が瞬く。壁を引いた瞬間のビジュアルフィードバックは、操作の気持ちよさに直結する要素だ。見た目の爽快感にはかなりこだわった。
属性の組み合わせが鍵
たとえば氷の壁で敵を減速させてから、その先に雷の壁を配置して高火力で一掃する。あるいは毒の壁で広範囲を汚染してから、短い炎の壁でトドメを刺してスコアを稼ぐ。3本の壁をどの属性で組み合わせるかで、プレイスタイルが大きく変わる。
10種の敵と段階的な学習曲線
敵の設計にも力を入れた。全10種類の敵がいるが、一度に全部出すのではなく、ステージ1から10にかけて段階的に新種が登場する設計にしている。
基本5種
- 小型バグ — 最弱だが数が多い。壁を引く基本を学ぶ相手
- ワーム — 蛇行しながら進む。直線の壁だけでは捉えにくい
- トロイの木馬 — 高耐久。短い壁では倒しきれず、長い壁でしっかり削る必要がある
- スパイウェア — 高速移動。壁を引くタイミングがシビアになる
- ランサムウェア — 耐久・速度ともに高い中ボス格。属性の使い分けが問われる
特殊5種
基本敵で操作に慣れたところで、プレイヤーの戦略を根本から揺さぶる特殊敵が登場する。
- ボマー — 壁に接触すると爆発し、壁そのものを破壊する。壁の配置を分散させる必要が出てくる
- シールド — バリアを張っていて、一定ダメージを与えるまで本体にダメージが通らない。雷で一気にバリアを割るか、毒でじわじわ剥がすか
- スポナー — 倒すと小型バグに分裂する。倒した後に備えた壁の配置が必要になる
- ステルス — 一定時間ごとに透明化する。見えない間も壁には当たるが、目視で狙いにくい
- ダッシャー — 突然ダッシュして壁をすり抜けようとする。壁を多重に配置する対策が要る
ポイントは、特殊敵がそれぞれ「壁による防衛」という前提を異なる角度から崩してくる点だ。壁を壊す、すり抜ける、分裂して数で押す、見えなくなる、突進する。プレイヤーは新しい敵が出るたびに「今までの壁の引き方」を見直すことになる。この「学んで、崩されて、また学ぶ」サイクルが、ステージを進めるモチベーションになっている。
シンプルだからこそ奥が深い
Firewall Drawの設計で一貫して大事にしたのは、「操作のシンプルさ」と「戦略の深さ」を両立させることだ。覚える操作は最後まで「線を引く」だけ。でも、壁の長さ、配置、タイミング、属性、本数の組み合わせによって、プレイヤーごとにまったく異なる戦い方が生まれる。
カジュアルに遊びたい人は長い壁を引いて安全に。スコアを突き詰めたい人は短い壁のリスクを取って。属性の組み合わせを研究する人もいれば、壁の角度にこだわる人もいる。入口はひとつだが、奥に広がる戦略空間は十分に広い。そんなゲームを目指した。
実際に触ってみると、言葉で説明するよりずっと直感的にわかるはずだ。ぜひ一度、自分の手で壁を引いてみてほしい。